「それじゃ、各局報告を」

 

美奈子は会議用の机に座っている部員をぐるりと見回す

週に一度行われる報告会

常にスクープを求める新聞部には、欠かせない事だった

 

「じゃあまず紅薔薇局から」


「はい」


そういって部員Aは立ち上がると、手帳をパラパラとめくり始める


「ここのところの紅薔薇さまですが、何だか様子が変です。

窓の外をぼんやり見つめては、溜め息を吐く姿が何度も確認されています」


「・・・あの紅薔薇さまが?」


つい怪訝な表情を浮かべてしまう美奈子

あの毅然とした態度を崩さない紅薔薇さまが、そんな様子を見せるなんて

どうにもイメージが沸かない


「はい、何だか遠い目をしていて。まるで恋患いみたいな・・・」


「恋患い!?」


途端に熱を帯びる美奈子

これはスクープの匂いがしてきた

あの紅薔薇さまとお付き合いしている人がいるとしたら

立派に紙面を飾れる、大ニュースである


「それで、相手は」


「いえ、そこまでは・・・それに恋をしているとわかった訳じゃありませんし」


「・・・・・・何だ、そうなの」


美奈子はあからさまに落胆した

一気に昇って一気に落ちたような

そんな表現がぴったり当てはまるようだった


「あ、そういえば」


「?」


「気のせいかも知れないんですけど。紅薔薇さま、いつも窓から同じ方角を見ているんです」


「同じ方角?そっちに、何かあるの」


「いえ、特には・・・方角的には、幼稚舎の方なんですけど」


「・・・何よそれ」


「私にもわかりません」


「・・・・・・でもまぁ、いいわ。引き続き調査して頂戴」


「はい」


「じゃあ次。黄薔薇局」


美奈子は気を取り直して次の報告へ移った

気持ちの切り替えの速さはさすがである

これくらいでないと新聞部の部長なんて務まらないのかもしれないけれど


呼ばれて立ち上がった部員Bは、淡々と語り始める


「黄薔薇さまは、相変わらずです・・・・・・が」


「・・・が?」


「あの、何と言うか・・・退屈そうな目をしてるのは変わらないんですけど」


「けど?」


何だかいまいちはっきりしない部員B

そんな態度に苛立ちを覚えつつも、美奈子は胸を期待に膨らませる


「目を輝かせる事が、最近多いんです。それに突然、思い出し笑いをしたり」


「それって、事件じゃないの」


いつも死んだ魚のような目をしている黄薔薇さま

その黄薔薇さまが楽しそうな表情を見せること自体、滅多に無い事だ

それが頻繁に起きているという事は、何かあったに違いなかった

あの黄薔薇さまに興味を抱かせる何かがある

それが判明すれば、もしかしたらスクープに化けるかもしれない


「ただ、理由はまだわかりませんが・・・」


「わかったわ。では、黄薔薇局も引き続き調査して」


「わかりました」


「次、白薔薇局」


呼ばれて部員Cは立ち上がる

少し興奮気味に、せわしなくメモ帳を開いて、報告を始めた


「白薔薇さまですが、最近は毎日昼休みになるとどこかへ行っているようです」


今までの報告に比べると、あまり興味を引かれる話ではなかった

自由奔放な白薔薇さまがどこかへふらりと行くのは、別に珍しい事ではないからだ

美奈子はあまり期待をしていないような表情で、頬杖をついていた


「それで、どこに行っているかはわかったの?」


そんな美奈子の態度に少しむっとしたが、部員Cはすぐに不敵な表情を浮かべた

美奈子が驚く様子を想像して、部員Cは口の端を上げてにやりと笑う


「聞いて驚かないで下さい。幼稚舎です」


「えっ!?」


顔を勢い良く上げて、目を見開く美奈子

思ったとおりの反応に、部員Cは勝ち誇った笑みを浮かべた


「毎日、幼稚舎に?幼稚舎に一体何が・・・」


とそこまで考えて、美奈子は部員Aの話を思い出す

紅薔薇さまも幼稚舎の方を見ては、重い溜め息を吐いていたと

最初は何て事の無い話だと思ったけれど

しかし『幼稚舎』というキーワードが一致した出てきたのは、果たして偶然だろうか


「幼稚舎に、スクープが転がっているのかもしれないわね」


思わぬ収穫に、美奈子を始めとする新聞部員達は色めき立つ

最近は何かと退屈なニュースで紙面を飾っていたところだ

そろそろドカンと大スクープの1つでも報道したい


「では各局、明日からその筋で調査して頂戴。良い報告を待っているわよ」


期待に満ちた空気に包まれて、今日の報告会は終了する

途端に目の前の道が開けたような感じがして、美奈子は心を躍らせた

 

 

 

「真美?入るわよ」


コンコン、とドアをノックしたものの、答えが返ってくる前にドアを開ける美奈子

しかし部屋に居た美奈子の妹の真美はそんな事さして気にするようでもない

毎回の事だから、もう慣れてしまったのだ


「なにか?」


「ね、幼稚舎に毎日白薔薇さまが来てるでしょ?それについて何か知らないかしら」


幼稚舎には、自分の妹が通っている

現場に居るのならば、相当核心に迫った話が聞けるかもしれないと美奈子は思ったのだった

真美はそれを聞いて、ああ、と何か納得したような表情を浮かべた


「うん、きてるよ」


「やっぱり。それで、白薔薇さまは何をしに来ているの?」


「・・・おしえない」


「な、何でよ」


「だって、それはわたしがつかんだスクープだもの」


「良いじゃないよ、別に」


「だめ。わたしがきじにするの」


真美は個人の趣味で新聞を作っている

リリアンかわら版みたいに、大量に印刷されて皆に出回る事なんて事は、もちろん無い

1部だけ作られた真美の手書きの新聞は、親しい友達の間で回し読みされていた


全く譲る気配を見せない真美に、美奈子は頭を抱える

この妹は園児のくせに大人びていて、素直に言う事を聞かないことも多い

しかも、それに加えて最近は


「リリアンかわらばんより、わたしのかいたしんぶんのほうがおもしろい」


とまで言い出す始末

可愛げのない妹だと思う事も少なくなかった


「じゃあ、良いわよ。私自身の目で確かめるから」


はぁ、とこめかみに手を当てて溜め息を吐く美奈子

でもまぁ、考えようによってはこっちの方が良いかも知れない

人の口から伝えられると、多少なりともその人の主観が混じってくる

本質を見失わないためには、自分の目で実際に見るのが一番だった


「・・・ところで真美、あなた何をしているの?」


真美はじっと前方を見据えたまま、しかし手は動かして紙に何やら文字を書いている

そんな妹に、美奈子は怪訝な表情で尋ねた


「みないでも、じをかけるようになるれんしゅう」


「な、何でそんな練習してるのよ」


「きしゃをめざすなら、これくらいあたりまえでしょ」


「・・・・・・・・・」


我が妹ながら、行く末が恐ろしいと感じた美奈子だった

 

 

 

翌日の昼休み

美奈子は、今日も幼稚舎へと向かう白薔薇さまの後をこっそりつけて行った

美奈子は髪型を変えて、さらにサングラスをかけている

怪しい上に、一発で正体がわかってしまう悲しい変装だった

記者や小説家としては才能の片鱗を見せる三奈子

だが、変装の資質には著しく欠けていた

 

それでも何とか白薔薇さまには感づかれずに、美奈子は無事幼稚舎へと足を踏み入れる

途中、生徒に怪しい目で見られていたけど、そんな事は全然気付いていなかった

恋は盲目というけれど、美奈子が恋しているのはスクープなのだ

スクープを前にすると、美奈子は周りが見えなくなってしまうのだった


「さて、白薔薇さまはここで何をするのか・・・・・・」


茂みに隠れて様子を観察する

ちょうど昼食を終えた園児達が外で遊んでいる時間帯だった

白薔薇さまはその中で、誰かを探すようにきょろきょろと辺りを見回している


「・・・誰かを探しているのかしら?」


しばらく見ていると、白薔薇さまは目的の人物を見つけたらしい、一気に走り寄っていった

しかもかなり嬉しそうな表情で

白薔薇さまの向かう先には、数人の園児が砂場で遊んでいる


人数は5人

ツインテールの女の子と

おさげを両肩かた垂らした女の子と

おかっぱ頭の市松人形のような女の子と

頭の両サイドにドリルをつけている女の子と

髪が長くて頭1つ他の子より背の高い女の子


白薔薇さまが側にやって来ると、ツインテールの女の子は嬉しそうな表情を浮かべる

他の4人は反対に、敵対心を剥き出しにしていた


「白薔薇さまが会いに来たのは、あのツインテールの女の子かしら・・・・・・あっ!」


美奈子は思わず身を乗り出す

目の前で起きている出来事から、美奈子は目を離せなかった

白薔薇さまがツインテールの女の子を抱きかかえて、しかも頬にキスまでしているではないか

美奈子はその状況を頭の中で何度も確認し、焼き付けると、再びさっと茂みに隠れた


「こ、これはスクープだわ。白薔薇さまが毎日幼稚舎に行っていた理由は、これだったのね」


興奮気味に呟く美奈子

まさか白薔薇さまがあんな小さい子にご執心だったとは

見方によってはただの「子供とスキンシップ」なんだけど

でも毎日幼稚舎にまであの子に会いに行く位だから、何か特別な感情があるかもしれない

美奈子はサングラスの向こう側で、瞳に情熱の炎を灯らせた

 

「ふふふ、これは早速記事にしなければ・・・」


「ねぇ、ちょっと」


いきなり上から声をかけられる

冷水を浴びせられたように興奮がぴたりと止んで、美奈子は恐る恐る上を見上げた


「ロ、白薔薇さま・・・」


「こんな所で何をしているのかな、新聞部の築山美奈子さん」


さっきまで砂場に居たはずの白薔薇さまが、気がついたら美奈子のすぐ側にいた

美奈子は心臓を掴み上げられる思いで、屈んだ姿勢のまま視線をそらす


「つ、築山美奈子?ひ、人違いではないでしょうか?」


「そんな怪しい変装していて、そりゃ無いでしょ」


「私はただの通りすがりの生徒。決して怪しい者では」


「怪しすぎてお釣りが来るわよ」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「で、見てたんでしょ?」


「は?」


「私が祐巳ちゃんに会いに行ってたの」


祐巳ちゃん

それがあのツインテールの女の子の名前か

だが、その祐巳という名前はどこかで聞いた事があった

美奈子は必死に記憶の引き出しを開ける

そして


「・・・もしかして、小笠原?」


「そこまで知ってるって事は、やっぱり美奈子さんじゃない」


上手く誘導させられてしまった

もうこうなったら、美奈子は諦めて認めざるを得なかった

 

以前、美奈子は小笠原祐巳について調べようとした事があった

聞くところによると、あの気難しい紅薔薇のつぼみが懇願してまで迎え入れた子らしい

新聞部としてはこの上なく惹きつけられる話題ではあったのだけど

しかし小笠原家の厚いガードにより、結局それは果たせなかった


それっきり記憶の片隅に封印していた存在が、再び明るみに出てきた

その話題の女の子と白薔薇さまの関係とは

美奈子の中の記者魂に、火がついた


「白薔薇さまと、あの子・・・小笠原祐巳ちゃんの関係は?」


さっきまで正体を指摘されても認めようとしなかったのに

途端に手のひらを返したように真相を聞き出そうとする美奈子に、白薔薇さまは苦笑した


「ふっふっふ。知りたい?」


「是非」


「私の婚約者」


「・・・は?」


「将来、私は祐巳ちゃんと結婚するの」


白薔薇さまの口から飛び出してきた事実に、美奈子は唖然とする

小笠原祐巳は白薔薇さまの婚約者

あまりにも突拍子が無い事を言われたので、美奈子はからかわれていると思った


「そんな、ご冗談を」


「冗談じゃないって。ちゃんと本人と約束したし」


「・・・本気ですか?だって、子供ですよ」


「本気も本気。それにあと10年もすれば、そんなの関係なくなるでしょ」


「・・・あの、もう一度お聞きしますが、本気ですか?」


「マリアさまに誓って」

 

美奈子は頭を抱えて悩んだ

これは記事にして良いのだろうか、と

本人は本気だって言ってるけど、例え本当だったとしても、いささか信憑性に欠けているネタだ

自分だってこんな記事を見たら、一笑に付して新聞をゴミ箱に捨ててしまうかもしれない


「信じられないって顔してるねー」


「あ、いや、そんな事は・・・」


とは言うものの、やっぱり信じられない美奈子であった

それを裏付ける事実が欲しい

何とか確証を得られないかと、美奈子は頭をフル回転させる


とそこで、頭の中であの日の報告会の様子が思い出された

あの時の、部員Aの報告

紅薔薇さまが、幼稚舎の方角を見ては溜め息を漏らしているという報告

これは使えるかもしれない


「あの、白薔薇さま」


「何?」


「最近、紅薔薇さまがまるで恋患いにかかっているようだと聞いたのですが」


「へぇ」


「それも、いつも窓から幼稚舎の方角を見て。これは何か関係あるんでしょうか」


「美奈子さん、なかなか目の付け所が良いね」


感心したように言う白薔薇さま

しかし美奈子は大して気にもせずに、先を促す


「それはどうも。それで、何か関係は」


「本当に恋してるのよ」


「は?だ、誰に」


「紅薔薇さまは、祐巳ちゃんに恋してるの」

 

・・・・・・・・・

 

「・・・また、そんなご冗談を」


「だから、冗談じゃないって。これも事実」


「ま、まさか。あの紅薔薇さままでもが園児に恋をするなんて」


「祐巳ちゃん、可愛いから。あの子には一撃必殺の威力があるんだよ」


「し、しかし」


「美奈子さんも実際に祐巳ちゃんと接してみれば、良くわかるって。

あ、でも惚れちゃ駄目だよ。これ以上ライバルが増えるのは、ごめんだから」


「え?ライバルって・・・まだ他にもいらっしゃるんですか?」


「そりゃもう、数え切れないくらいに」


「ひょっとして、最近黄薔薇さまが楽しそうにしているのも」


「祐巳ちゃん絡みだろうね」


「・・・・・・・・・」

 

美奈子は驚きを隠せなかった

紅薔薇さまも、黄薔薇さまも、白薔薇さまも

揃いも揃って小笠原祐巳という女の子にご執心だったとは

冗談のようで、でも白薔薇さまの目は本気だった

 

「さて、新聞部部長の築山美奈子さん」


そう言って白薔薇さまは屈んで、美奈子と視線を同じ高さにする


「は・・・はい?」


美奈子は警戒心を強める

肩書き付きのフルネームで呼ばれたという事は、多分ただ事ではない


「ここまで情報を提供したんだから、私に協力してくれるよね」


「は・・・協力、ですか?一体何を」


「私と祐巳ちゃんの関係を、記事にして欲しいんだよね」


「ど、どうして」


「リリアンかわら版の影響力は強いから。私たちは世間公認のカップルって、認識されたいのよ」


「でも、そうしたら祐巳ちゃんの存在を多くの人に知られてしまうのでは?ライバル、増えますよ」


「隠し通す方が難しいよ。だったらいっそ、ってね」


白薔薇さまは、何が何でも新聞にそう書かせるつもりだ

それでも美奈子は、本気かどうか確認するように食い下がる


「本当によろしいんですか。子供に熱を上げているなんて、ファンが知ったら泣きますよ」


「歳なんか関係無いって。祐巳ちゃんの良さは、そんなもんじゃ左右されない。だから私は気にしない」


「はぁ」


「何だか乗り気じゃないね」


「いえ、ちょっと思考が現実に追いついていかなくて」


「これってスクープでしょ。最近、つまんない記事ばっかりだったからねー。

新聞部にとって、悪い話じゃ無いと思うよ。どう?」


白薔薇さまの言葉を、美奈子はゆっくり理解する

 

そうだ

これは大ニュースだ

学園の注目を一身に集める薔薇さまの熱愛発覚なのだから

話題を集めるのは、間違いない

 

「その話、お受けします!」


突然、鼻息も荒く白薔薇さまの手を握る美奈子

白薔薇さまはさすがに少し驚いたけど、上手く話が進んで、内心ほくそ笑んだ

 

普段は目の上のたんこぶ的な存在である新聞部

だが、リリアンかわら版の影響力は相当強い

毒を持って毒を制す、という訳ではないが、その影響力だけを利用するのだ

これで私と祐巳ちゃんは婚約者の間柄だと皆に認識される

そうすれば

 

「そうすれば、私達が祐巳ちゃんに手を出そうとすれば、それは略奪愛だと。

少なくとも皆にはそう認識されて、世間は聖、あなたに味方してくれるわね」



白薔薇さまの思惑をずばり言い当てている人物

もちろん、美奈子ではない

だが白薔薇さまは自分の計画に酔いしれていて、あまり気にしていなかった

白薔薇さまは饒舌になって、相槌を打つ


「そう。正義はこの私、白薔薇さまにある」


「でも、貴女らしく無いのではなくて?世間を味方につけるなんて」


「そうは言っても、相手は曲者揃いだから。少しでも有利な要素は欲しいんだ」


「そう。で、その曲者って、誰かしら?具体的に教えて頂戴、聖」


白薔薇さまはようやく視線を上げて、声の主へと向き直りつつ言葉を紡ぐ


「そりゃあ姉の祥子とか。あと、志摩子も油断ならないね。でも一番厄介・・・なのは・・・・・・」


次第に白薔薇さまの声が小さくなっていった

目の前の人物を認識して、一気に顔が青ざめていく

白薔薇さまと美奈子の前に居たのは

 

「・・・蓉子さんとか、江利子さん・・・かな。は、はははは」

 

紅薔薇さまと黄薔薇さまだった

 

 

 

「甘いわね聖、この私たちを謀れるとでも思って?」


「よ、蓉子。それに江利子。どうしてここに」


「聖の後を、怪しい格好をした美奈子さんが付けていくのを見たのよ。

私は、常に最悪のケースを想定して行動するの。そうしたら案の定、ってね」


晴れやかに笑う紅薔薇さま

それはそれはとても美しいのだが、白薔薇さまには恐怖の対象にしか映らなかった


「聖。次は病院通り越して天国に送るって、いつか忠告したはずだけど」


こちらも紅薔薇さまに負けず劣らずの笑顔を浮かべる黄薔薇さま

でもやっぱり、白薔薇さまには恐怖の対象にしか映らない


「え、江利子、天国は勘弁して欲しいな」


引きつった笑顔を作って何とか誤魔化そうとする白薔薇さま

紅薔薇さまと黄薔薇さまは笑顔のまま、ゆっくりと白薔薇さまを追い詰めていく


「じゃあ、病院止まりにしておいてあげるわ、聖」


「ちょ、ちょっと落ち着いてよ2人とも。話せばわかるから、ね?」


「病院に、馬鹿につける薬があると良いわね」


そういって紅薔薇さまと黄薔薇さまはゆっくりと手を振り上げる

次の瞬間、後頭部に鈍い衝撃が走り、同時に白薔薇さまの意識は失われていった

 

 

 

 

「・・・これ、2回目だよ」

 

「・・・前にもあったんですか」



そう言って白薔薇さまと美奈子は、溜め息を吐く

薔薇の館の前にある木に、2人仲良く吊るされていた

 

「あの時は、『ロリ・ギガンティア』って張り紙だったなぁ」

 

白薔薇さまは感慨深げに呟く

後頭部にはまだ痛みが残っていた

 

「・・・それを言うなら、あの2人も『ロリ・キネンシス』と『ロリ・フェティダ』なのでは」

 

「・・・・・・やっぱ、そう思うよね」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「・・・ところで、何で私まで吊るされてるんですか?」

 

「まぁ、私に協力しようとしたから。連帯責任ってやつ?」

 

「はぁ」

 

「今回は失敗だったけど。でも私は、諦めないわよ。今度こそは!」

 

「・・・白薔薇さま、私、付いて行きますよ。スクープの為に」

 

こんな事でめげる白薔薇さまと美奈子では無い

風に揺られながら、2人は決意を新たにした

 

 

 

「・・・それにしてもさ」

 

「何でしょう」

 

「『愚か者』っていう張り紙は無いよね」

 

「・・・・・・・・・」

 

何で私まで、と

やっぱりそう思わずにはいられない美奈子であった

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